だろう?』
『うむ。』
私は大きく頷《うなず》いた。
『で、天祥丸の乗組員でこのマッチを持った男と、行方不明になった二人の男とが、あの晩旋盤工場の裏の鉄屑の捨場で行《ゆ》き逢《あ》った、と言う風《ふう》に僕は推理を進めた。ところで、いいかい君。山田源之助は、中気で、而《しか》も右腕に怪我をしていた筈《はず》だ。その源之助が、あれ丈《だ》け鮮《あざやか》に喜三郎の心臓を突き刺す事が出来ると思うかい? 一寸《ちょっと》六ヶ|敷《し》い話だ。そこで僕は、先程|此処《ここ》を出ると早速《さっそく》山田源之助の遺族を訪ねて、源之助が右利きであった事を確《たしか》めて見た。ところが其処《そこ》で一層都合の良い事には、喜三郎と源之助の二人は、三年|前《ぜん》まで、どうだい君、天祥丸の水夫をしていたんだぜ。そこで僕は充分の自信を持って芝浦まで出掛け、予定の行動を取ったんさ。外でもない。まだ出帆前の天祥丸の船長に逢って、頭文字《イニシャル》の配列がG・Yとなる男が乗組員の中に何人あるか調べて貰った。すると事務長の八木稔と言うのと、この水夫長の矢島五郎君の二人だ。ところが、事務長の八木稔の方はもう五十近
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