波の鴎鳥《かもめどり》、呼びかふ声を耳にして、
磯根に近き岩枕《いはまくら》汚れし眼《まなこ》、洗はばや。

     *

噫《ああ》いち早く襲ひ来る冬の日、なにか恐るべき。
春の卯月《うづき》の贈物、われはや、既に尽し果て、
秋のみのりのえびかづら葡萄《ぶどう》も摘まず、新麦《にひむぎ》の
豊《とよ》の足穂《たりほ》も、他《あだ》し人《びと》、刈《か》り干しにけむ、いつの間《ま》に。

     *

けふは照日《てるひ》の映々《はえばえ》と青葉|高麦《たかむぎ》生ひ茂る
大野が上に空高く靡《な》びかひ浮ぶ旗雲《はたぐも》よ。
和《な》ぎたる海を白帆あげて、朱《あけ》の曾保船《そほふね》走るごと、
変化《へんげ》乏しき青天《あをぞら》をすべりゆくなる白雲よ。

時ならずして、汝《なれ》も亦近づく暴風《あれ》の先駆《さきがけ》と、
みだれ姿の影黒み蹙《しか》める空を翔《かけ》りゆかむ、
嗚咽《ああ》、大空の馳使《はせづかひ》、添はゞや、なれにわが心、
心は汝《なれ》に通へども、世の人たえて汲む者もなし。
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   嗟嘆《といき》      ステ
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