の凄き羊群も長棹《ながさを》の鞭に
撻《うた》れて帰る、たづたづし、罪のねりあし。
疾風《はやて》に歌ふ牧羊の翁、神楽月よ、
今、わが頭掠《かしらかす》めし稲妻の光に
この夕《ゆふべ》おどろおどろしきわが命かな。
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火宅《かたく》 エミイル・ヴェルハアレン
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嗚呼《ああ》、爛壊《らんえ》せる黄金《おうごん》の毒に中《あた》りし大都会、
石は叫び烟《けむり》舞ひのぼり、
驕慢の円葢《まるやね》よ、塔よ、直立《すぐだち》の石柱《せきちゆう》よ、
虚空は震ひ、労役のたぎち沸《わ》くを、
好むや、汝《なれ》、この大畏怖《だいいふ》を、叫喚を、
あはれ旅人《たびうど》、
悲みて夢うつら離《さか》りて行くか、濁世《だくせい》を、
つゝむ火焔の帯の停車場。
中空《なかぞら》の山けたゝまし跳り過ぐる火輪《かりん》の響。
なが胸を焦す早鐘《はやがね》、陰々と、とよもす音《おと》も、
この夕《ゆふべ》、都会に打ちぬ。炎上の焔、赤々、
千万の火粉《ひのこ》の光、うちつけに面《おもて》を照らし、
声黒《こわぐろ》きわめき、さ
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