》の営《いとなみ》に、
夕暮がたの悲を心に痛み歩むごと、
また古《いにしへ》の六部等《ろくぶら》が後世《ごせ》安楽の願かけて、
霊場詣《りようじようまうで》、杖重く、番《ばん》の御寺《みてら》を訪ひしごと。

赤々として暮れかゝる入日の影は牡丹花《ぼたんか》の
眠れる如くうつろひて、河添馬道《かはぞひめどう》開けたり。
噫《ああ》、冬枯や、法師めくかの行列を見てあれば、
たとしへもなく静かなる夕《ゆふべ》の空に二列《ふたならび》、

瑠璃《るり》の御空《みそら》の金砂子《きんすなご》、星輝ける神前に
進み近づく夕づとめ、ゆくてを照らす星辰は
壇に捧ぐる御明《みあかし》の大燭台《だいそくだい》の心《しん》にして、
火こそみえけれ、其|棹《さを》の閻浮提金《えんぶだごん》ぞ隠れたる。
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   水かひば    エミイル・ヴェルハアレン

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ほらあなめきし落窪《おちくぼ》の、
夢も曇るか、こもり沼《ぬ》は、
腹しめすまで浸りたる
まだら牡牛の水かひ場《ば》。

坂くだりゆく牧《まき》がむれ、
牛は練《ね》りあし、馬は※[#「足へん
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