ひと時に、劫《ごう》の「心」の
捧げたる願文《がんもん》にこそ。光り匂ふ法《のり》の会《え》のため、
祥《さが》もなき預言《かねごと》のため、折からのけぢめはあれど、
例《いつ》も例《いつ》も堰《せ》きあへぬ思《おもひ》豊かにて切《せち》にあらなむ。
「日《ひ》」の歌は象牙にけづり、「夜《よる》」の歌は黒檀に彫《ゑ》り、
頭《かしら》なる華《はな》のかざしは輝きて、阿古屋《あこや》の珠《たま》と、
照りわたるきらびの栄《はえ》の臈《ろう》たさを「時《とき》」に示せよ。

小曲は古泉《こせん》の如く、そが表《おもて》、心あらはる、
うらがねをいづれの力しろすとも。あるは「命《いのち》」の
威力あるもとめの貢《みつぎ》、あるはまた貴《あて》に妙《たへ》なる
「恋」の供奉《ぐぶ》にかづけの纏頭《はな》と贈らむも、よし遮莫《さもあらばあれ》
三瀬川《みつせがは》、船はて処《どころ》、陰《かげ》暗き伊吹《いぶき》の風に、
「死」に払ふ渡《わたり》のしろと、船人《ふなびと》の掌《て》にとらさむも。
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   恋の玉座    ダンテ・ゲブリエル・ロセッティ


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