り》気がつよい。
百合もいろいろあるなかに、
鳶尾草《いちはつぐさ》のよけれども、
あゝ、今は無し、しよんがいな。
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花の教 クリスティナ・ロセッティ
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心をとめて窺《うかが》へば花|自《おのづか》ら教あり。
朝露の野薔薇《のばら》のいへる、
「艶《えん》なりや、われらの姿、
刺《とげ》に生《お》ふる色香《いろか》とも知れ。」
麦生《むぎふ》のひまに罌粟《けし》のいふ、
「せめては紅《あか》きはしも見よ、
そばめられたる身なれども、
験《げん》ある露の薬水を
盛《も》りさゝげたる盃《さかづき》ぞ。」
この時、百合は追風に、
「見よ、人、われは言葉なく
法を説くなり。」
みづからなせる葉陰より、
声もかすかに菫草《すみれぐさ》、
「人はあだなる香《か》をきけど、
われらの示す教暁《をしへさと》らじ。」
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小曲 ダンテ・ゲブリエル・ロセッティ
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小曲は刹那をとむる銘文《しるしぶみ》、また譬《たと》ふれば、
過ぎにしも過ぎせぬ過ぎし
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