経たるものにして「監督ブルウグラムの護法論」「フェリシュタアの念想」等これを証す。これを綜《す》ぶるに、ブラウニングの信仰は、精神の難関を凌《しの》ぎ、疑惑を排除して、光明の世界に達したるものにして永年の大信は世を終るまで動かざりき。「ラ・セイジヤス」の秀什《しゆうじゆう》、この想を述べて余あり、又、千八百六十四年の詩集に収めたる「瞻望《せんぼう》」の歌と、千八百八十九年の詩集「アソランドオ」の絶筆とはこの詩人が宗教観の根本思想を包含す。[#地から1字上げ]訳者
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   花くらべ    ウィリアム・シェイクスピヤ

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燕《つばめ》も来《こ》ぬに水仙花、
大寒《おほさむ》こさむ三月の
風にもめげぬ凜々《りり》しさよ。
またはジュノウのまぶたより、
ヴィイナス神《がみ》の息《いき》よりも
なほ臈《ろう》たくもありながら、
菫《すみれ》の色のおぼつかな。
照る日の神も仰ぎえで
嫁《とつ》ぎもせぬに散りはつる
色蒼《いろあを》ざめし桜草《さくらそう》、
これも少女《をとめ》の習《ならひ》かや。
それにひきかへ九輪草《くりんそう》、
編笠早百合《あみがささゆ
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