願はくは吾に与へよ、力と沈勇とを。
いつまでも永く狗子《いぬ》のやうに従ひてむ。
生贄《いけにへ》の羊、その母のあと、従ひつつ、
何の苦もなくて、牧草を食《は》み、身に生《お》ひたる
羊毛のほかに、その刻《とき》来ぬれば、命をだに
惜まずして、主に奉る如くわれもなさむ。
また魚とならば、御子《みこ》の頭字象《かしらじかたど》りもし、
驢馬《ろば》ともなりては、主を乗せまつりし昔思ひ、
はた、わが肉より禳《はら》ひ給ひし豕《ゐのこ》を見いづ。
げに末《すゑ》つ世の反抗表裏の日にありては
人間よりも、畜生の身ぞ信深くて
心|素直《すなほ》にも忍辱《にんにく》の道守るならむ。
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よくみるゆめ ポオル・ヴェルレエヌ
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常によく見る夢ながら、奇《あ》やし、懐《なつ》かし、身にぞ染む。
曾ても知らぬ女《ひと》なれど、思はれ、思ふかの女《ひと》よ。
夢見る度のいつもいつも、同じと見れば、異《ことな》りて、
また異らぬおもひびと、わが心根《こころね》や悟りてし。
わが心根を悟りてしかの女《ひと》の眼に胸のうち、
噫《あ
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