ほのぼのとあけゆく光、疑ひて眼《まなこ》ひらけば、
雄々しかる田つくり男、梯立《はしだて》に口笛鳴らし、
※[#「糸+曾」、第3水準1−90−21]具《はたもの》の※[#「足へん+搨のつくり」、第4水準2−89−44]木《ふみき》もとゞろ、小山田に種《たね》ぞ蒔きたる。

世の幸《さち》を今はた識《し》りぬ、人の住むこの現世《うつしよ》に、
誰かまた思ひあがりて、同胞《はらから》を凌《しの》ぎえせむや。
其日より吾はなべての世の人を愛しそめけり。
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   信天翁《おきのたゆう》     シャルル・ボドレエル

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波路遙けき徒然《つれづれ》の慰草《なぐさめぐさ》と船人《ふなびと》は、
八重の潮路の海鳥《うみどり》の沖の太夫《たゆう》を生檎《いけど》りぬ、
楫《かぢ》の枕のよき友よ心|閑《のど》けき飛鳥《ひちよう》かな、
奥津潮騒《おきつしほざゐ》すべりゆく舷《ふなばた》近くむれ集《つど》ふ。

たゞ甲板《こうはん》に据ゑぬればげにや笑止《しようし》の極《きはみ》なる。
この青雲の帝王も、足どりふらゝ、拙《つたな》くも、
あは
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