はふり散らすも、祝福の枝をかざすも、
皆こゝに物は始まり、皆こゝに事は終らむ、
産屋《うぶや》洩る初日影より、臨終の燭《そく》の火までも、
天離《あまさか》る鄙《ひな》の伏屋《ふせや》も、百敷《ももしき》の大宮内《おほみやうち》も、
紫摩金《しまごん》の栄《はえ》を尽して、紅《あけ》に朱《しゆ》に矜《ほこ》り飾るも、
鈍色《にびいろ》の樫《かし》のつくりや、楓《かへで》の木、杉の床にも。
独《ひと》り、かの畏《おそれ》も悔も無く眠る人こそ善けれ、
みおやらの生れし床に、みおやらの失《うせ》にし床に、
物古りし親のゆづりの大床《おほどこ》に足を延ばして。
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出征 ホセ・マリヤ・デ・エレディヤ
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高山《たかやま》の鳥栖巣《とぐらす》だちし兄鷹《しよう》のごと、
身こそたゆまね、憂愁に思は倦《うん》じ、
モゲルがた、パロスの港、船出して、
雄誥《をたけ》ぶ夢ぞ逞《たく》ましき、あはれ、丈夫《ますらを》。
チパンゴに在りと伝ふる鉱山《かなやま》の
紫摩黄金《しまおうごん》やわが物と遠く、求むる
船の帆も撓《
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