らさき》あかあかと、華奢《かしや》のきはみの絵模様に、
薄色ねびしみどり石、蝕《むしば》む底ぞ被《おほ》ひたる。

鱗《こけ》の光のきらめきに白琺瑯《はくほうろう》を曇らせて、
枝より枝を横ざまに、何を尋《たづ》ぬる一大魚《いちだいぎよ》、
光|透入《すきい》る水かげに慵《ものう》げなりや、もとほりぬ。

忽ち紅火飄《こうかひるが》へる思の色の鰭《ひれ》ふるひ、
藍《あゐ》を湛《たた》へし静寂のかげ、ほのぐらき清海波《せいがいは》、
水揺《みづゆ》りうごく揺曳《ようえい》は黄金《おうごん》、真珠、青玉《せいぎよく》の色。
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   床       ホセ・マリヤ・デ・エレディヤ

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さゝらがた錦を張るも、荒妙《あらたへ》の白布《しらぬの》敷くも、
悲しさは墳塋《おくつき》のごと、楽しさは巣の如しとも、
人生れ、人いの眠り、つま恋ふる凡《す》べてこゝなり、
をさな児《ご》も、老《おい》も若《わかき》も、さをとめも、妻も、夫も。

葬事《はふりごと》、まぐはひほがひ、烏羽玉《うばたま》の黒十字架《くろじゆうじか》に
浄《きよ》き水
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