相側防し合うように巧みに火網を構成しているから、とんでもない方から射撃せられる。散兵戦術のように大体我に向い合った敵を自由に攻撃さしたなら大変な混乱に陥る恐れがある。
そこで否が応でも「統制」の必要が生じて来た。即ち指揮官ははっきり自分の意志を決定する。その目的に応じて、各隊に明確な任務を与え各隊間共同の基準をも明らかにする。しかも戦況の千変万化に応じ、適時適切にその意図を決定して明確な命令を下さねばならない。自由放任は断じてならぬ。昭和十五年改正前の我が歩兵操典に大隊の指揮に対し、大隊長の指揮につき「大隊戦闘の本旨は諸般の戦況に応じ大隊長の的確かつ軽快なる指揮と各隊の適切なる協同とに依り大隊の戦闘力を遺憾なく統合発揮するにあり」と述べ(第四百八十)更に「……戦況の推移を洞察して適時各隊に新なる任務を附与し……自己の意図の如く積極的に戦闘を指導す」(第五百四)と指示している。
この統制の戦術のためには次の事が必要である。
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1、指揮官の優秀、およびそれを補佐する指揮機関の整備。
2、命令、報告、通報を迅速的確にする通信連絡機関。
3、各部隊
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