号令をかける時刀を抜き、敬礼する時刀を前方に投出すのはこの時代の遺風と信ずる。精神上から言ってもまた実戦の必要から言っても、号令をかける場合刀を抜く事は速やかに廃止する事を切望する。猥《みだ》りに刀を抜き敵に狙撃せられた例が少なくない。そうすれば指揮刀なるものは自然必要なくなる。日本軍人が指揮刀を腰にするのはどうも私の気に入らない。今日刀を抜いて指揮するため危険予防上指揮刀を必要とするのである。
フランス革命により本式に採用せらるるに至った散兵戦術の指導精神は、フランス革命以来社会の指導原理となった「自由」である。横隊の窮屈なのに反し、散兵は自由に行動して各兵の最大能力を発揮する。各兵は大体自分に向った敵に対し自由に戦闘するのである。部隊の指揮単位に於てなるべく各隊長の自由を尊重するのである。大隊戦闘の本旨は「大隊の攻撃目標を示し、第一線中隊をして共同動作」せしむるに在った。そうして大隊長はなるべく干渉を避けるのである。
[#底本254頁右上に図あり]
戦闘群の戦術となると形勢は更に変化して来た。敵は散兵の如く大体我に向き合ったものが我に対抗するのではない。広く分散している敵は互に
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