、各兵の独断能力。
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 3に示す如く、統制では各隊の独断は自由主義時代より更に必要である。いかに指揮官が優秀でも、千変万化の状況は全く散兵戦術時代とは比較にならぬ結果、いちいち指揮官の指揮を待つ暇なく、また驚くべき有利な機会を捉うる可能性が高い。各兵も散兵に比しては正に数十倍の自由活動の余地があるのである。一兵まで戦術の根本義を解せねばならぬ。今日の訓練は単なる体力気力の鍛錬のみでなく、兵の正しき理解の増進が一大問題である。我らの中少尉時代には戦術は将校の独占であった。第一次欧州大戦後は下士官に戦術の教育を要求せられたが、今日は兵まで戦術を教うべきである。
 統制は各兵、各部隊に明確なる任務を与え、かつその自由活動を容易かつ可能ならしむるため無益の混乱を避けるため必要最少限の制限を与うる事である。即ち専制と自由を綜合開顕した高度の指導精神であらねばならぬ。
 近時のいわゆる統制は専制への後退ではないか。何か暴力的に画一的に命令する事が統制と心得ている人も少なくないようである。衆が迷っており、かつ事急で理解を与える余裕のない場合は躊躇なく強制的に命令せねばならない
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