る。資本主義諸列強の攻撃がレーニンを救ったとも見る事が出来るのではないか。資本主義国家の圧迫が、レーニンをしていわゆる「国防国家建設」への明確な目標を与え大衆を掌握せしめた。
 もちろん「無産者独裁」が大衆を動かし得たる事は勿論であるが、大衆生活の改善は簡単にうまく行かず、大なる危機が幾度か襲来した事と思う。それを乗越え得たのは「祖国の急」に対する大衆の本能的衝動であった。マルクス主義の理論が自由主義の次に来たるべき全体主義の方向に合するものであり、殊に民度の低いロシヤ民族には相当適合している事がソ連革命の一因をなしている事を否定するのではないが、列強の圧迫とあらゆる困難矛盾に対し、臨機応変の処理を断行したレーニン、スターリンの政治的能力が今日のソ連を築き上げた現実の力である。第一線決戦主義で堂々開始せられた革命建設も結局第二線決戦的になったと見るべきである。
 ナチス革命は明瞭な第二線決戦主義である。ヒットラーの見当は偉い。しかしヒットラーの直感は革命の根本方向を狙っただけで、詳細な計画があったのではない。大目標を睨みながら大建設を強行して行くところに古き矛盾は解消されつつ進展した。
前へ 次へ
全319ページ中255ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
石原 莞爾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング