大戦でも依然決戦は地上で行なわれ、空中戦はなお補助戦法の域を脱し得ないが、体の戦法への進展過程であることは疑いを容れない。線の戦法の時でも砲兵の採用は既に面の戦法への進展である。総ての革新変化は決して突如起るものではない。もちろんある時は大変化が起り「革命」と称せられるけれども、その時でさえよく観察すれば人の意識しない間に底流は常に大きな動きを為しているのである。
 ソ連邦革命は人類歴史上未曽有の事が多い。特にマルクスの理論が百年近くも多数の学者によって研究発展し、その理論は階級闘争として無数の犠牲を払いながら実験せられ、革命の原理、方法間然するところ無きまでに細部の計画成立した後、第一次欧州大戦を利用してツアー帝国を崩壊せしめ、後に天才レーニンを指導者として実演したのである。第一線決戦主義の真に徹底せる模範と言わねばならぬ。
 しかし人智は儚《はかない》いものである。あれだけの準備計画があっても、やって見ると容易に思うように行かない。詳しい事は研究した事もないから私には判らないが、列国が放任して置いたらあの革命も不成功に終ったのではなかろうか。少なくもその恐れはあったろうと想像せられ
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