ていなかったり、親切にされる男は、こっちで虫が好かなかったりなどした。年が合わなかったり、商売が気に入らなかったりした。双方いいのは親係りであった。主人持ちであった。
するうちに、お増はだんだん年を取って来た。出る間際のお増の心には、堅い一人の若いお店《たな》ものと浅井と、この二人が残ったきりであった。
男のために、始終裸になっていたお雪と自分とを、お増は心のなかで比べていた。
「だらしがないじゃないの。いつまで面白いことが続くもんじゃないよ。」
お増は一緒にいる時分から、時々お雪にそう言ってやったことがあった。けれどお雪自身は、それをどうすることも出来なかった。一つは、一時|新造《しんぞ》に住み込んでまで、くっついていた母親が、お雪に自分のことばかりを考えさせておかなかったのではあったが、黒田の世話になっていた時分からの、お雪自身の体にも、そうした血が流れていたのであった。
しみじみした話が、日の暮れまで絶えなかった。
「あの人の、どこがそんなにいいのさ。」
お増はお雪に揶揄《からか》った。
「こうなっちゃ、いいも悪いもありゃしないよ。しかたなしさ。」
お増をそこまで送り
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