る。お前さんとこの親方は威勢がいいばかりで、肴《さかな》は一向新しくないとか、刺身の作り方が拙《まず》くてしようがないとかいう小言もあった。
お作は嫂と一緒に、お客にでも来たように、火鉢を一尺も離れて、キチンと坐って聞いていた。
「それじゃね、晩にお刺身を一人前……いいかえ。」と言って、お国は台所の棚へ何やら収《しま》い込んでから、茶の室《ま》へ入って来た。軟《やわら》かものの羽織を引っ被《か》けて、丸髷《まるまげ》に桃色の手絡《てがら》をかけていた。生《は》え際《ぎわ》がクッキリしていて、お作も美しい女だと思った。
お国は、キチンと手を膝に突いている二人の姿を見ると、
「オヤ。」とびっくりしたような風をして、
「何てえんでしょう、私ちっとも知りませんでしたよ。それでも、もうそんなに快《よ》くおなんなすって。汽車に乗ってもいいんですか。」と火鉢の前に座を占めて、鉄瓶を持ちあげて、火を直した。
「え、もう……。」とお作は淋しい笑顔《えがお》を挙げて、「まだ十分というわけには行きませんけれど……。」と嫂の方を向いて、「姉さん、この方が小野さんのお内儀《かみ》さん……。」
「さようでござ
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