しない。ね、新さん、どうしたんでしょうね。」
 新吉は寝た振りをして聴いていたが、この時ちょっと身動きをした。
「解んねえ。けど、まア入るものと決めておいて、自分の体の振り方をつけた方がよかないかね。私《あっし》あそう思うがね。」と声が半分蒲団に籠《こも》っていた。「そうして出て来るのを待つんですね。」
「ですけど、私だって、そう気長に構えてもいられませんからね。」と寝衣姿《ねまきすがた》のまま自分の枕頭《まくらもと》に蹲跪《つくば》って、煙管をポンポン敲いた。「あの人の体だって、出て来てからどうなるか解りゃしない。」
 新吉はもう黙っていた。
 翌日《あした》目を覚まして見ると、お国はまだ寝ていた。戸を開けて、顔を洗っているうちに、ようやく起きて出た。
 朝飯が済んでしまうと、お国は金盥《かなだらい》に湯を取って、顔や手を洗い、お作の鏡台を取り出して来て、お扮飾《つくり》をしはじめた。それが済むと、余所行《よそゆ》きに着替えて、スッと店頭《みせさき》へ出て来た。
「私ちょいと出かけますから……。」と帳場の前に膝《ひざ》を突いて、どこへ行くとも言わず出てしまった。
 新吉はどこか気がか
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