まう。
 新吉は茶を二、三杯飲むと、ツト帳場へ出た。大きな帳面を拡げて、今日の附揚《つけあ》げをしようとしたが、妙に気がイライラして、落ち着かなかった。おそろしい自堕落な女の本性が、初めて見えて来たようにも思われた。
「莫迦にしてやがる。もう明日からお断わりだ。」

     二十八

 療治が済むと、お国は自分の財布から金をくれて按摩を返した。近所ではもうパタパタ戸が閉《しま》るころである。
 お国はいつまでも、ぽつねんと火鉢の前に坐っていたが、新吉も十一時過ぎまで帳場にへばり着いていた。
 寝支度に取りかかる時、二人はまた不快《まず》い顔を合わした。新吉はもう愛想がつきたという顔で、ろくろく口も利かず、蒲団のなかへ潜《もぐ》り込んだ。お国は洋燈《ランプ》を降したり、火を消したり、茶道具を洗ったり、いつもの通り働いていたが、これも気のない顔をしていた。
 寝しなに、ランプの火で煙草を喫《ふか》しながら、気がくさくさするような調子で、「アア、何だか厭になってしまった。」と溜息を吐《つ》いた。「もうどっちでもいいから、早く決まってくれればいい。裁判が決まらないうちは、どうすることも出来や
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