れがもう目に着くようであった。何だか済まないような気もしたが、行って顔を見るのが厭なような心持もした。
一里半ばかり、鼻のもげるような吹曝《ふきさら》しの寒い田圃道《たんぼみち》を、腕車《くるま》でノロノロやって来たので、梶棒《かじぼう》と一緒に店頭《みせさき》へ降されたとき、ちょっとは歩けないくらい足が硬張《こわば》っていた。
車夫《くるまや》に賃銀を払っていると、「マア!」と言ってお作が障子の蔭から出て来た。新吉が新調のインバネスを着て、紺がかった色気の中折を目深《まぶか》に冠った横顔が、見違えるほど綺麗に見え、うつむいて蟇口《がまぐち》から銭を出している様子が、何だか一段も二段も人品が上ったように思えた。
「よく来られましたね。寒かったでしょう。」とお作は帽子やインバネスを脱がせて、先へ奥に入ると、
「阿母《おっか》さん、宅《うち》でいらっしゃいましたよ。」と声をかけた。
新吉が薄暗い茶の室《ま》の火鉢の側に坐ると、寝ぼけたような顔をして、納戸のような次の室《ま》から母親が出て来た。リュウマチが持病なので、寒くなると炬燵《こたつ》にばかり潜《もぐ》り込んでいると聞いたが、い
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