姓をしている。その男が意気地《いくじ》がなかったので、長い間苦労をさせられた。それから間もなく小野と懇意になった。会社員だという触込みであったが、覩《み》ると聴くとは大違いで、一緒に世帯を持って見ると、いろいろの襤褸《ぼろ》が見えて来た。金は時たま三十四十と攫《つか》んでは来るが、表面《うわべ》に見せているほど、内面は気楽でなかった。才は働くし、弁口もあるし、附いていれば、まさかのめって死ぬようなこともあるまいけれど、何だか不安でならなかった。着物も着せてくれるし、芝居も見せてくれるが、それはその場きりで、前途《さき》の見越しがつかぬから、それだけで満足の出来よう道理がない……とお国はシンミリした調子で、柄にないジミな話をし始めた。
「私|真実《ほんとう》にそう思うわ。明けるともう二十五になるんだから、これを汐《しお》に綺麗に別れてしまおうかと……。」
新吉は黙っていた。聞いているうちに、何だか女というものの心持が、いくらか胸に染《し》みるようにも思われた。
二十三
正月になってから、新吉は一度お作を田舎に訪ねた。
町が寂れているので、ここは春らしい感じもしなかった
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