計の出物があるから買わないかとか、格安な莨入れの渋い奴があるから取っておけとか、よくそういう話を新吉に持ち込んでくる。
「私《あっし》なんぞは、そんなものを持って来たって駄目さ。気楽な隠居の身分にでもなったら願いましょうよ。」と言って新吉は相手にならなかった。
「だが君はいいね。そうやって年中|常綺羅《じょうきら》でもって、それに内儀さんは綺麗だし……。」と新吉は脂《やに》ッぽい煙管《きせる》をむやみに火鉢の縁で敲《たた》いて、「私《あっし》なんざ惨めなもんだ。まったく失敗しちゃった。」とそれからお作のことを零《こぼ》し始める。
「その後どうしてるんだい。」と小野はジロリと新吉の顔を見た。
「どうしたか、己《おら》さっぱり行って見もしねえ。これっきり来ねえけれア、なおいいと思っている。
「子供が出来れアそうも行くまい。」

     十七

「どんな餓鬼《がき》が出来るか。」と新吉は忌々《いまいま》しそうに呟《つぶや》いた。
 小野は黙って新吉の顔を見ていたが、「だが、見合いなんてものは、まったく当てにはならないよ。新さんの前だが、彼《あれ》は少し買い被ったね。婚礼の晩に、初めてお作さ
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