萄酒《ぶどうしゅ》などを鞄《かばん》の隅《すみ》へ入れてやった。
「そのうちには己も行くさ。」
「真実《ほんとう》に来て下さいよ。」お作は出遅れをしながら、いくたびも念を推した。
十六
お作が行ってから、新吉は物を取り落したような心持であった。家が急に寂しくなって、三度三度の膳に向う時、妙にそこに坐っているお作の姿が思い出される。お作を毒づいたことや、誹謗《へこな》したことなどを考えて、いたましいようにも思った。何かの癖に、「手前《てめえ》のような能なしを飼っておくより、猫の子を飼っておく方が、はるかに優《まし》だ。」とか、「さっさと出て行ってくれ、そうすれば己も晴々《せいせい》する。」とか言って呶鳴った時の、自分の荒れた感情が浅ましくも思われた。けれど、わざわざお作を見舞ってやる気にもなれなかった。お作から筆の廻らぬ手紙で、東京が恋しいとか、田舎は寂しいとか、体の工合が悪いから来てくれとか言って来るたんびに、舌鼓《したうち》をして、手紙を丸めて、投《ほう》り出した。お袋に兄貴、従妹《いとこ》、と多勢一緒に撮《と》った写真を送って来た時、新吉は、「何奴《どいつ》も此奴《
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