今度少し吟味しろッって……。今持って行くんです。」
「吟味しろッて。」新吉は顔を顰《しか》めて、「水ッぽいわけはねえんだがな。誰がそう言った。」
「旦那がそう言ったですよ。」
「そういうわけは決してございませんッって。もっとも少し辛くしろッてッたから、そのつもりで辛口にしたんだが……。」と新吉は店へ飛び出して、下駄を突っかけて土間へ降りると、何やらブツクサ言っていた。
店ではゴボゴボという音が聞える。しばらくすると、小僧はまた出て行った。
「ろくな酒も飲まねえ癖に文句ばっかり言ってやがる。」と独言《ひとりごと》を言って、新吉は旧《もと》の座へ帰って来た。得意先の所思《おもわく》を気にする様子が不安そうな目の色に見えた。
お作は番茶を淹《い》れて、それから湿《しと》った塩煎餅《しおせんべい》を猫板の上へ出した。新吉は何やら考え込みながら、無意識にボリボリ食い始めた。お作も弱そうな歯で、ポツポツ噛《かじ》っていた。三月の末で、外は大分春めいて来た。裏の納屋《なや》の蔭にある桜が、チラホラ白い葩《はなびら》を綻《ほころ》ばせて、暖かい日に柔かい光があった。外は人の往来《ゆきき》も、どこか
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