でもお金が残るわ。」
「当然《あたりまえ》じゃねえか。」新吉は嬉しそうな笑《え》みを目元に見せたが、じきにこわいような顔をする。お作が始末屋というよりは、金を使う気働きすらないということは、新吉には一つの気休めであった。お作には、ここを切り詰めて、ここをどうしようという所思《おもわく》もないが、その代り|鐚《びた》一文自分の意志で使おうという気も起らぬ。ここへ来てから新吉の勝手元は少しずつ豊かになって来た。手廻りの道具も増《ふ》えた。新吉がどこからか格安に買って来た手箪笥や鼠入《ねずみい》らずがツヤツヤ光って、着物もまず一と通り揃《そろ》った。保険もつければ、別に毎月の貯金もして来た。お作はただの一度も、自分の料簡《りょうけん》で買物をしたことがない。新吉は三度三度のお菜《かず》までほとんど自分で見繕《みつくろ》った。お作はただ鈍《のろ》い機械のように引き廻されていた。

     十三

 得意場廻りをして来た小僧の一人が、ぶらりと帰って来たかと思うと、岡持をそこへ投《ほう》り出して、「旦那。」と奥へ声をかけた。
「××さんじゃ酒の小言が出ましたよ。あんな水ッぽいんじゃいけないから、
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