潰《つぶ》れたとも言い出せなかった。
 これまで親の膝下《ひざもと》にいた時も、三年の間西片町のある官吏の屋敷に奉公していた時も、ただ自分の出来るだけのことを正直に、真面目にと勤めていればそれでよかった。親からは女らしい娘だと讃《ほ》められ、主人からは気立てのよい、素直な女だと言って可愛がられた。この家へ片づくことになって、暇を貰う時も、お前ならばきっと亭主を粗末にしないだろう。世帯持ちもよかろう。亭主に思われるに決まっていると、旦那様《だんなさま》から分に過ぎた御祝儀を頂いた。夫人《おくさま》からも半襟《はんえり》や簪《かんざし》などを頂いて、門の外まで見送られたくらいであった。新吉に頭から誹謗《けな》されると、お作の心はドマドマして、何が何だかさっぱり解らなくなって来る。ただ威張って見せるのであろうとも思われる。わざと喧《やかま》しく言って脅《おどか》して見るのだろうという気もする。あれくらいなことは、今日は失敗《しくじ》っても、二度三度と慣れて来れば造作なく出来そうにも思える。どちらにしても、あの人の気の短いのと、怒りっぽいのは婆やが出てゆく時、そっと注意しておいてくれたのでも解
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