者の出入りがあり、今度は少し優《ま》しなのが来たと思うと、お座敷が陰気で裏が返らなかったり、少し調子がいいと思っていると、客をふるので出先からお尻《しり》が来たり、みすみす子供が喰《く》いものになると思っても、親の質《たち》のわるいのは手のつけようがなく、いい加減前借を踏まれて泣き寝入りになることもあった。係争になる場合の立場も弱かった。
せっかく取りついてみたが松島もつくづくいやになることもあった。抱えの粒が少しそろったところで小菊に廃業させ、今は被害|妄想《もうそう》のようになってしまった自分の気持を落ち着かせ、彼女をもほっとさせたいと思うのだったが抱えでごたごたするよりか、やっぱり自分で働く方が、体は辛《つら》くとも気は楽だと小菊は思うのであった。
松島は小菊の帰りが遅くなると、後口があるようなふうにして電話をかけ、そっと探りを入れてみたりすることもあり、少し怪しいと感づくと、帳場に居たたまらず、出先の家《うち》のまわりをうそうそ歩くことも珍しくなかった。
「夜店のステッキがまたじゃんじゃんするといけないから、貴女《あなた》は早くお帰り。」
などと小菊は傍《はた》から言われ
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