言われした。
痴話|喧嘩《げんか》のあとは、小菊も用事をつけるか、休業届を出すかして骨休めをした。
そのころになると、とっくに本郷の店も人に譲り、マダムの常子も春日町の借家を一軒立ち退《の》かせ、そこで小綺麗《こぎれい》に暮らしていたが、もう内輪同様になっているので、気が向くと松の家へ入りこみ、世間話に退屈を凌《しの》いだ。小菊も薄々知っていたが、松島も折にふれては機嫌《きげん》取りに春日町を訪ねるらしく、芸者を抱える時に、ちょっと金を融通してもらったりしていた。前々からのはどうなっているのか、多分一旦は何ほどか返したと思うと、また借りたり、ややこしいことになっているので、常子も松島も明瞭《めいりょう》なことは解《わか》らず、彼女もたまに返してもらえば、思わぬ株の配当でも貰《もら》ったような気がするのだった。
松島も次第に商売の骨《こつ》もわかり、周旋屋の手に載せられるようなどじ[#「どじ」に傍点]も踏まず、子供を使いまわすことにも、特得の才能が発見され、同業にも顔が利くようになった。やがて松の家の芸者が立てつづけに土地での玉数《ぎょくかず》のトップを切り、派手好きの松島は、菰冠
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