その日の場所を都合してもらうことにした。
「ああ、晴《はア》ちゃんですか。今日はどこも一杯ですが、あんたのことだから、まあ何とかしましょう。」
 その年ももう十一月で、銀子もほとんど健康を恢復《かいふく》し、疲れない程度で、気儘《きまま》に座敷を勤めていた。錦糸堀でも、裏に小体《こてい》な家を一軒、その当座時々|躰《からだ》を休めに来る銀子の芸者姿が、近所に目立たないようにと都合してあるのだったが、今はそれも妹たちが占領していた。
「やあ晴ちゃん、病気してすばらしく女っぷりがあがったね。助かってまあよかった。」
 長く姿を見せなかった銀子を、初めて見た箱丁《はこや》は誰も彼もそう言って悦《よろこ》んでくれたものだったが、それほど躰が、きっそりして、お神が着物を造るたびに、着せ栄《ば》えがしないと言っていつもこぼしていた彼女の姿も、いくらか見直されて来た。
 劇場では、入って行くとすぐ、そこらを忙《せわ》しそうに徘徊《はいかい》していた瀬川が見つけ、
「いらっしゃい。さっきはお電話で恐縮でした。場所も私の無理が通りまして、一番見いいところを取っておきました。さあどうぞ。」
 と先に立ち、
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