《えちご》の親類の織元から、子供たちに送ってくれた銘仙《めいせん》を仕立てて着せた時の悦びも、思い出すと涙の種であった。唐人髷《とうじんまげ》に結って死にたいと言っていたので、息を引き取ってから、母は頭を膝《ひざ》のうえに載せ、綺麗《きれい》に髪を梳《す》いて唐人髷に結いあげ、薄化粧をして口紅をつけたりした。その当座線香の匂いが二階へも通い、銀子はいやな思いにおそわれたが、まだ下に寝ているような気がしたり、春よしの路次を出て行く後ろ姿が見えたりした。「あの子はあれだけの運さ。悔やんでも仕方がない。それよりお前の体が大切だよ。」
母は言っていたが、銀子も一度死神に憑《つ》かれただけに、助かってそう有難いとも思えず、死ぬのも仕方がないと思っていた。
もうここまで来れば大丈夫だから、予後の静養に温泉へでも行ってみるのもよかろうと、医師が言うので、六月の末母につれられて伊香保《いかほ》へ行ってみたが、汽車に乗ってもどこか気細さが感じられ、手足の運動も十分とは行かず、久しぶりで山や水を見ても、それほど楽しめなかった。
伊香保はぼつぼつ避暑客の来はじめる時節で、ここは実業界の名士に、歌舞伎《
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