す。逢いたがっていらっしゃいますから。」
 看護婦はそう言って、そっと銀子を抱き起こし、一人は両脇《りょうわき》から上半身を抱え、一人は脚を支えてそろそろ段梯子《だんばしご》を降《くだ》り、病床近くへつれて来たが、時子は苦しい呼吸の下から、姉の助かったことを悦《よろこ》び、今まで世話になった礼を言い、後のことをくれぐれ頼んで、銀子を泣かせるのだった。
 じきに最後の呼吸ががくりと咽喉《のど》に鳴り、咽《むせ》ぶように絶えてしまい、医師の駈《か》けつけた時分には、死者の枕《まくら》を北に直し、銀子も自分の寝床にかえっていた。
 二階の病人を動かしたことで、看護婦はさんざん叱《しか》られたが、銀子の病気もそれからまた少し後退した。

      十四

 狭い二階の東向きの部屋で、銀子は五箇月もの間寝たきりだったが、六月になってから、少しずつ起きあがる練習をしてみたらばと医師も言うので、床のうえに起き直ろうとしたが、初めは硬直したような腕の自由は利かず、徒《いたず》らに頭ばかり重いので、前に※[#「※」は「足+「倍」のつくり」、第3水準1−92−37、452−上15]《のめ》って肩を突き、
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