、そうした時に病気が出たのであった。
 彼女は自分よりも銀子に脈のあることを悦《よろこ》び、ある時は、目のとどく処《ところ》に花を生けておいたり、人形を飾ってくれたりしていたが、どうせ保《も》たないのは既定の事実なので、したいようにさせておいた。やがて彼女の死期が迫り、梅村医師がはっきり予言した通り、月の十三日に短いその生涯に終りが来た。
「私はこれから大磯《おおいそ》まで行って来ますが、帰りは十時ごろになるでしょう。さあ臨終に間に合うかどうかな。」
 医師はそう言って帰ったのだったが、その予言にたがわず、時子の死は切迫して来た。学校の成績がいつも優等であった彼女は、最後の呼吸《いき》が絶えるまで頭脳《あたま》が明晰《めいせき》で、刻々迫る死期を自覚していた。
「今日が一番苦しい。きっと死ぬんだわ。」
 その日彼女は昼間からそれを口にしていたが、夜になると一層苦痛が加わり、八時九時と店の時計が鳴るにつれて、医者の来るのが待たれた。
「先生が東京駅へついた時分よ。」
 彼女は苛立《いらだ》って来たが、もう駄目だとわかりにわかに銀子に逢《あ》いたくなり、父に哀願した。
「お妹さんが御臨終で
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