二人の看護婦を督励し、ひっきりなしの注射に酸素吸入、それにある部分は冷やし、ある部分は温めもしたり、寝食を忘れて九死に一生を得ようと努めるのだった。
 春よしでは、婆《ばあ》やだけ残して抱え全部を懇意な待合の一室に外泊させ、お神も寝ずの番で看護を手伝うのだったが、苛酷《かこく》な一面には、派手で大業《おおぎょう》な見栄《みえ》っぱりもあり、箱丁《はこや》を八方へ走らせ、易を立てるやら御祈祷《ごきとう》を上げて伺いを立てるやらした。一人が柴又《しばまた》へ走ると一人は深川の不動へ詣《まい》り、広小路の摩利支天《まりしてん》や、浅草の観音へも祈願をかけ、占いも手当り次第五六軒当たってみたが、どこも助かると言うもののない中に、病人の肌襦袢《はだじゅばん》に祈祷を献《ささ》げてもらった柴又だけが、脈があることを明言したのだった。しかしその一縷《いちる》の望みも絶え、今はその死を安からしめるために人々は集まり、慰めの言葉で臨終を見送ろうとするのだった。
 濛靄《もや》のかかったような銀子の目には、誰の顔もはっきりとは見えず、全身|薔薇《ばら》の花だらけの梅村医師の顔だけが大写しに写し出されていた
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