春次と一緒に乗っている伊沢の車に割り込み、染福が一人乗りおくれてまごまごしているのを見たが、穴守へついてからも、染福の銀子を見る目が嶮《けわ》しく光り、銀子は何のこととも解らず、謎《なぞ》を釈《と》くのに苦しんだが、深く気にも留めず、帰りは一台の車にタイヤのパンクがあり、いっそ三台とも乗りすてて、川崎から省線で帰ることにしたのだったが、松の内のことで、彼女たちは揃《そろ》って出の支度《したく》であり、縁起ものの稲穂の前插《まえざ》しなどかざして、しこたま買いこんだ繭玉《まゆだま》や達磨《だるま》などをてんでにぶら下げ、行きがけの車に持ち込んだウイスキーと、穴守のお茶屋で呑《の》んだ酒にいい加減酔っていたので、染福は何かというと銀子に絡《から》んで来るのだった。
暮の中洲《なかず》で秘密に逢《あ》った銀子と伊沢は、春次が気を利かして通しておいた鍋《なべ》のものにも手をつけず、やがて待合を出て女橋を渡り、人目をさけて離れたり絡んだり、水天宮の裏通りまで来て、袂《たもと》を分かったのだったが、例の癲癇《てんかん》もちの稲次の穴埋めに、オーロラの見えるという豊原からやって来た染福は、前身が人
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