《まね》をするもんじゃないわよ。」
「悪かったわね。貴女のお座敷へ来て貴女の顔を潰《つぶ》すなんて。何しろ貴女には若ーさんという人が附いているんですからね。お蔭《かげ》で少し恰好《かっこう》がついたかと思うと、もうこの始末だ。」
「悪いわよ、有りもしないことを言って、貴女若ーさんの気持を悪くするばかりじゃないか。」
そうなると分けの染福より丸の晴子を庇護《かば》うのが、姐《あね》芸者の気持であり、春次も染福を抑え、
「貴女《あんた》も酔っているから、お帰んなさい。」
と手を取って引き起こそうとしたが、染福はそれを振り払い、
「いいわよ。私何も有りもしないことを言ってるんじゃないんだから。」
「それは貴女の誤解だよ。後で話せば解《わか》ることだよ。もういいからお帰んなさい。」
春次が引き立てるので、銀子もどうせ暴露《ばれ》ついでだと思い、
「帰れ、帰れ。」
と目に涙をためて叫んだ。
しかしその時に限らず、ちょうどその五六日前にも、銀子たちは三台の車に分乗し、伊沢も仲間入りして、春よしのお神に引率され、羽田の穴守《あなもり》へ恵方詣《えほうまい》りに行き、どうかした拍子に、銀子は
前へ
次へ
全307ページ中281ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
徳田 秋声 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング