くって仕様がない。」
 春次は独りで呑《の》み込み、もう暮気分のある日の午後のことだったが、銀子は中洲《なかず》の待合から口がかかり、車で行ってみると、大川の見える二階座敷で、春次と伊沢がほんの摘《つま》み物くらいで呑んでいた。水のうえには荷物船やぽっぽ蒸汽が忙しそうに往来し、そこにも暮らしい感じがあった。伊井や河合《かわい》の根城だった真砂座《まさござ》は、もう無くなっていた。
 銀子は来たこともない家《うち》であり、こんな処《ところ》でも伊沢は隠れて遊ぶのかと思い、ちょっと妙な気もしたが、春次と二人きりでいるのも可笑《おか》しいと思い、この間の梅園での話が、そう急に実現するものとは想像もしていなかった。
「いらっしゃい。」
 伊沢はあらたまった口を利き、寒いから一つと言って猪口《ちょく》を差すので、銀子も素直に受け、一つ干して返した。
「今、何かあったかいものが来るから、晴さんゆっくりしていらっしゃいね。」
 春次は、わざわざ一つ二つ春よしの抱えの噂《うわさ》などをしてから、そんなことを言って、席をはずしたので、銀子は伊沢と二人きりになり、座敷にぎごちなさを感じたが、伊沢も同様であ
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