うともした。
 銀子も気が迷い、はっきり断わりもしなかったが、註文《ちゅうもん》を出したこともなかった。それというのも、わざと向島へつれて行ったりして、暗に幾人かの女を世話していることを衒《ひけら》かし、自身の金力と親切を誇示するかのような態度に、好い気持のするわけもなく、それに目を瞑《つぶ》るとしても、今まで世話になった若林を裏切るだけの価値があるかどうかの計算もなかなかつかないのであった。
「七人あるというから、私は八号目じゃないか。」
 銀子は思ったが、しかし五つか六つしか年の違わない若林の何かにつけて淡泊で頼りないのに比べると、女で苦労し、世間も広いだけに、愛着も思いやりも深く、話も永瀬の方が面白かった。いずれも結婚の相手でないとすれば、永瀬の世話になった方が、足を洗うのに都合が好いようであった。
「どう思う、姐《ねえ》さん。」
 あまり人に相談したことのない銀子もついに春次にきいてみるのだった。
「まあ当分双方うまく操《あやつ》っておくのよ。何もお嬢さんが結婚するんじゃありゃしまいし、はっきり決める手はないじゃないか。」
 春次は言うのだったが、銀子もそうかと思いながら、永瀬
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