鉄の門扉《もんぴ》に鉄柵《てっさく》がめぐらしてあり、どんな身分かと思うような構えだったが、大場その人はでっぷり肥《ふと》った、切れの長めな目つきの感じの悪い、あまりお品のよくない五十年輩の男で、これも花村からの※[#「※」は「「夕」の下に「寅」」、第4水準2−5−29、437−下15]縁《いんねん》で、取引することになり、抱え妓《こ》の公正証書を担保に、金を融通するので、勘定日には欠かさず背広姿で、春よしの二階へ現われるのだった。
 帳場に坐るはずであった花村は、その時分には用がなくなり、開業当初の関係を断ち切るために、訪ねて来ても、気分が悪いといって、二階へ上げないこともあり、留守を使って逐《お》っ攘《ぱら》うこともあった。
「今日もお留守か。いや別に用事はないがね。どうしたかと思ってね。」
 花村はそう言って上へあがり、お婆《ばあ》さんや抱えを相手にお茶を呑《の》みながら世間話をして帰るのだったが、お八つをおごって行くこともあった。
「この節私もあまり景気はよくないがね、まだお神に小遣《こづかい》をせびるほど零落《おちぶ》れはしないよ。みんなに蜜豆《みつまめ》をおごるくらいの金は
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