の女将《おかみ》は、年のころ五十ばかりで、名古屋の料亭《りょうてい》の娘といわれ、お茶の嗜《たしな》みもあるだけに、挙動は嫻《しと》やかで、思いやりも深そうな人柄な女であった。彼女の指には大粒の黒ダイヤが凄《すご》く光っていて、若い妓《こ》が値段を聞きたがると、
「これかい。安いのさ。五千円で買ったんだよ。」
と彼女は事もなげに言うのだった。
この若い株屋を銀子につける時、
「お前《ま》はんも何かないと、お困りだろうからね、若《わー》さんなら、堅くてさっぱりしていて、世話の焼けない方だから、よかろうと思ってね。」
とお神は言うのだったが、若造の若林もお前はんお前はんで子供扱いであり、いつもあまり興味のなさそうな顔で、酒も酔うほどに呑《の》まず、話がはずむということもなく、店を仕舞ったころに、ふらりとやって来たかと思うと、株の話などをして、お神に言われておひけになったかならぬに、もう風呂《ふろ》へ飛びこみ、部屋へ帰って出花でも呑むと、すぐ帰るのであった。もちろん家には最近迎えたばかりの新妻《にいづま》はあり、夫婦生活の味もまだ身に染《し》む間もないころのことだったが、銀子にも嫉妬《
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