しっと》に似た感情の芽出しはありながら、それを引きとめる手もなく、双方物足りぬ感じで別れるのだった。
「お前はんもあまり情がなさすぎるやないか。それじゃこの子も愛情が出にくかろうから、少しゆっくりしていたらどうだろうね。」
 お神は気を揉《も》み、取持ち顔に言うのであった。

      四

 藤川の女将の斡旋《あっせん》で若林の話がきまった晩、彼は別れぎわに小遣を三十円ばかり銀子に渡し、あまり無駄使いしないようにと言って帰ったのだったが、その晩は銀子も家《うち》の侘《わび》しいお膳《ぜん》で、お茶漬《ちゃづけ》で夜食をすまし、翌朝割引電車で、錦糸堀《きんしぼり》の家へ帰ると、昨夜もらった手付かずの三十円をそっくり母親に渡した。
 父も母も宵寝《よいね》の早起きだったのて、台所ではもう焚《た》きたての飯の匂いがしており、七輪にかかった鍋《なべ》の蓋《ふた》の隙間《すきま》から、懐かしい味噌汁《みそしる》の甘い煙も噴《ふ》き出していた。
 どこでもそうだが、今の主人も、表の派手な人に引き換え、内に詰めるだけ詰める方で、夜座敷から帰って来ても、夜食に大抵|古沢庵《ふるたくあん》の二|片《
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