を受け取り、東京からもって来た鏡台や三つ抽斗《ひきだし》、下駄《げた》や傘《かさ》なども一つに纏《まと》めて、行李《こうり》と一緒に父がすばしこく荷造りをすますと、物の四十分もたたないうちに銀子たち三人は車で駅に駈《か》けつけ、送って来た本家と分寿々廼家のお神と愛子に名残《なごり》を惜しむ間もなく、汽車はI―町を離れ、銀子も何となし目が潤《うる》んで来た。
「今ここへ来ている。事情は新聞で知ったことと思う。時機を待つことにする。」
 こご田近くへ来た時、例の森のなかの白壁が遙かに汽車の中から見え、銀子はふと二日ほど前に新婚旅行先の飯坂《いいざか》温泉から来た、倉持の絵葉書が想《おも》い出され、胸先の痛くなるのを感じたが、あの物哀《ものがな》しい狭い土地から足をぬいたことは、何といっても気持がよかった。
 錦糸堀の家《うち》へついたのは、夜の十一時であったが、一年ぶりで帰って来る姉の着くのが待遠しく、妹たちは二階で寝てしまったのもあり、店先へ出て車がつくかと目を見張っているのもあり、銀子が父のあとから土間へ入って行くと、東京を立つ時にはまだ這《は》い出しもしなかった末の妹が、黒い顔に例の
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