して、あれほど約束した倉持の情熱が、どうやらぐらついて来たように思えそれが悲しかった。
「お母さんのおっしゃることは、よく解《わか》りました。お世話になるかならぬか、それはよく考えてみます。」
 銀子はきっぱり答えて、やっと母を送り出した。

      十三

 母を送り出し、銀子は帳場でちょっと挨拶《あいさつ》して帰ろうとすると、お神も女中も彼女の顔を見てへらへらと笑っているので、自分の莫迦《ばか》を笑っているのかしらと、思わず顔が赤くなった。
 ふと看《み》ると帳場つづきの薄暗いお神の居間に、今まで寝転《ねころ》んでいたらしい倉持が起きあがって咳《せき》をした。
「何だそこにいたの。いつ来たんです。」
 銀子はそう言って帳場へ坐ったが、さも退屈していたらしく、
「随分長たらしいお談義だったじゃないか。何を話してたんだい。」
「ううん別に……後で話すわ。」
 銀子は気軽に言ったが、母の柔らかい言葉のうちにひしひし胸に突き当たるものが感じられ、その場ではうかうか聴《き》き流していたが、正味をつまみあげてみると、子息《むすこ》とお前とは身分が違うとはっきり宣告されたも同様だと思われてな
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