て幸福になる気遣《きづか》いはありません、若い同志で好き合ったから、家へ入れよう入りましょうと、気軽に約束しても、結果は必ずまずいに決まっておりますから、家へ入ることだけは思い止まっていただきましょう。その代り、私も生木《なまき》を割《さ》くようなことはしません。貴女さえ承知なら、借金を払って、どこか一軒小さい家でも借りて、たんとのこともできませんが、月々の仕送りをしてあげましょう。」
やっぱりそうだ! と銀子は思ったが、きっぱり断わるでもないと思って、黙って俛《うつむ》いていた。
「真吾も詳しいことは話しませんが、貴女も迹取《あとと》り娘のようなお話ですね。」
「そうですの。」
「それじゃなおさらのことです。どっちも相続人ということであれば、貴女が結婚しようと思っても、親御さんが不承知でしょう。」
銀子もそこまで、はっきり考えていたわけではなかったが、千葉で栗栖との結婚|談《ばなし》のあった時、妹の一人に養子を取りさえすれば、自分の籍はぬけるように聞いており、相続者の責任は早く脱《の》がれたいとは考えていたのだったが、そんな世間的のことは、この際考えたくはなく、古い階級観念を超越
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