らなかった。しかしまた籍のことなども言っていたし、初めて逢《あ》った自分に愛情を感じたように取れば取れないこともなく、悪く取るのは僻《ひが》みだとも思えるのであった。
 倉持は空腹を感じていたので、料理と酒を註文《ちゅうもん》し、今母のいた部屋で、気仙沼《けせんぬま》の烏賊《いか》の刺身で呑《の》みはじめ、銀子も怏々《くさくさ》するので呑んだ。倉持の話では、めったに町へ出たことのない母親が、倉持がちょっと役場へ行っている間に、出かけたというので、第六感が働き、来てみると果してそうであった。多分|煙草屋《たばこや》かどこかで聞いて来たものであろうことも、倉持は想像していた。
「何といっていた?」
「そうね。詰まるところ門閥も高いし、血統も正しいから、私たちのような身分のないものは、家へ入れられないというようなことじゃないの。」
「そうはっきり言ったかい。」
「家へ入るのは駄目だけれど、どこか一軒外に家をもつなら、そうしてあげてもいいといったような話もあったわ。」
「君は何と言ったの?」
「そう言われて、私もそれでもいいから、お願いしますとも言えないでしょう。だから考えさしていただきますと
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