があり、文房具なども商うかたわら、見番の真似事《まねごと》のような事務を執っている老人夫婦があり、それが倉持家の乾分《こぶん》であったところから、母はその夫婦に就《つ》いて、子息《むすこ》の相手の芸者の名や人柄を調べ、行きつけの家も分かったのであったが、銀子はどんな話かと思って逢ってみると、生家も倉持とほぼ同格程度の門地で、仙台の女学校出だと聞いていた通り、ひどく人触りの柔らかな、思いやりのふかいうちに門閥とか家とかいう観念の強さが見え、芸者|風情《ふぜい》には歯も立たないのだった。
彼女は持って来た袱紗包《ふくさづつみ》を釈《ほど》いて、桐《きり》の箱に入った、四五尺もあろうかと思う系譜の一巻を卓上に繰りひろげ、平家の残党として、数百年前にこの土地に居つき、爾来《じらい》宮城野《みやぎの》の豪族として、連綿数十代の血統の絶えなかったことから、夙《はや》く良人《おっと》に別れて、一粒種の幼児を守《も》り立て、門地を傷つけまいとして、内と外との軽侮や迫害と闘《たたか》って来た今日までの彼女自身の並々ならぬ苦労を、諄々《じゅんじゅん》と物語るのだった。
銀子もこの老婦人が、初めから芸者
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