と思っておるんだが、そうすれば親父《おやじ》に相談して、貴女の借金も払うから、ぜひ結婚してもらいたいもんだね。貴女はどう思うかね。」
「そうね。そんなこと考えたこともないけれど……。」
「やっぱり倉持がいるから駄目かね。」
 浦上は溜息《ためいき》を吐《つ》き、
「しかしあそこには渡さんという、喧《やかま》しい後見人がいるがね。」
 と呟《つぶや》き、首を傾《かし》げていた。
「いいわよ、そんなこと。」
 銀子は虫酸《むしず》が走るようで、そんな顔をしていた。

      十一

 十月の末、控訴院から大審院まで持って行った猪野の詐欺《さぎ》、横領に関する事件がいよいよ第二審通り決定した旨の電報が入り、渡弁護士の斡旋《あっせん》によって、弁護士の権威五人もの弁論を煩わしたこの係争も、猪野の犯した悪事の割には、事実刑も軽くて済むのにかかわらず、寿々廼家夫婦は今更のように力を落とした。猪野は今一年有余の体刑を被《き》ても、襤褸《ぼろ》を出さないだけの綿密な仕組の下に、生涯裕福に暮らせるだけの用意をしたのであり、体刑は覚悟の前であったはずだが、金を隠匿《いんとく》しない反証にもと、退《ひ》
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