、僕の祖父時代までは家伝として製法して人に頒《わ》けてやっていたもんです。僕も十四五の時分に見たことがありますが、今は大概採りつくして、よほど奥の方へ行かないと見つからないということは聞いていたです。僕は寿々《すう》さんのためにそいつを捜しに出かけたんだがね、なるほど確かにそれに違いないと思う薬草はあるにはあるんだが、容易なことじゃ採れっこないですよ。何しろ深い谿間《たにあい》のじめじめした処《ところ》だから、ずるずる止め度もなく、辷《すべ》って、到頭深い洞穴《あな》のなかへ陥《お》ちてしまったもんですよ。」
「まあ。私また兄《わん》さんがしばらく見えないから、どうしたのかと思って……。」
「お山の坊さんに聞いてみたら、やはりそうだというから、二日がかりで採集したのはいいけれど、二日目に崖から足を踏みはずして、酷い目に逢ってしまいましたよ。しかし成功だったね。」
浦上はそう言って、三共で製剤してもらったという小さい罐《かん》を二個、紙包みから取り出し、銀子の病床におき、その用法をも説明した。
「そんなにまでしていただかなくてもよかったのに。お気の毒したわ。」
「なに、僕も一度は捜しに
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