汚《きたな》らしい感じで、何となく虫が好かず、親切すぎるのも煩《うるさ》かった。銀子は入院当時、自尊心を傷つけるのがいやさに、わざと肋膜《ろくまく》だといって脅《おど》かし、家《うち》の都合でここで安静にしているのだと話したのだったが、しばらく姿を現わさないところを見ると、それを真に受け、怖《おそ》れて近づかないのかしらなぞと思っていた。それが今ごろどうして来たのか、珍らしい人が来たものだと、わざと恍《とぼ》けていた。
「もう起きていいのかね。」
看《み》ると浦上は、左の頬《ほお》から頭へかけ、大袈裟《おおげさ》に繃帯《ほうたい》していたが、左の手首から甲へも同じく繃帯がしてあった。
「わんさんどうしたの?」
「酷《ひど》い目に逢《あ》いましたよ、高野山《こうやさん》で……。」
「高野山へ行ってたの。」
「そうですよ。高野山で崖《がけ》から落っこちて怪我《けが》したですよ。ほらね、足も膝皿《ひざさら》を挫《くじ》いて一週間も揉《も》んでもらって、やっと歩けるようになったですよ。」
「まあどうして……。」
「高野山に肺病なら必ず癒《なお》るという薬草があるのです。これは誰にも秘密だがね
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