れたこともあった。
「そのまたアイス・クリームのうまさと来たら、持って来れるものなら、ここへもって来て、貴女方に食べさせたいくらいだね。僕今度東京へも寄って来たけれど、あんなアイス・クリームはどこにもないね。」
「そんなおいしいの、食べたいわね。」
「どうです、今度パラオへ行ってみませんか。横浜から二週間で行けますよ。」
「行ってみたいわね。」
滝川は愛子の養父であり、従って寿々廼家の旦那《だんな》である廻船問屋《かいせんどんや》の主人の甥《おい》であり、この町から出た多くの海員の一人で、中学を出たころすでに南洋に憧《あこ》がれを抱《いだ》き、海軍兵学校の入学試験をしくじってから、そんな船員団の仲間に加わったものだったが、長くこの冒険事業に従事するつもりはなく、二十六歳の現在から、十年余りも働いて、一財産造り、陸へ上がって生涯の方嚮《ほうこう》を決める肚《はら》であった。
話がはずんているところヘ、今日も罐詰屋《かんづめや》の野良息子《のらむすこ》が顔を出し、ちょっとふてぶてしくも見える青年が、壁ぎわの畳敷きに胡座《あぐら》を組んで葉巻をふかしているのを見て、戸口に躊躇《ちゅうちょ
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